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1950年代前半に開始されたILOの技術協力は、すべての大陸のあらゆる経済開発段階にある国を対象とします。最近10年間の技術協力プロジェクト費用は、年平均約1億3千万ドル。全世界に現地事務所と地域総局のネットワークをもつILOは受益国、拠出国・機関と密接に協力しながらプロジェクトを実施しています。
ILOの技術協力の全体的な目的は、各国レベルで「ディーセント・ワーク」の課題が実現されることで、この理念をすべての男女にとって現実のものとするため、政府、労使団体を支援しています。アフリカ、アジア、中南米、中・東欧、中東と広大に展開する事務所網を通じて、政策事項に関する技術指導、開発計画の設計と実施における支援を提供しています。
★多彩なプログラム
小企業経営者を対象とした経営訓練、社会保障制度の強化、元戦闘員の社会復帰支援、労働安全衛生分野における労働組合支援、農村部における協同組合の設立、政府の労働法改正に対する協力。以上は140余りの国・地域で実施されているILOの広範な技術協力計画のほんの一端です。
これらのプログラムの重点は、労働における基本的原則と権利の推進、雇用、社会保護、三者構成主義と社会対話の強化といったILOの4つの戦略目標に対応する諸分野に置かれています。
この枠組み内で、技術協力の大半を占めるのが、雇用創出を通じた貧困緩和のための開発政策・計画、企業振興及び協同組合開発といった分野です。
プログラムの構成員、特に労使団体の能力育成と強化、そしてジェンダーを本流に組み入れることに特に注意が払われています。このほかの支援分野としては、職場における労働者の保護、社会保障制度の開発があげられます。
労働における基本的原則及び権利に関する宣言を採択したことによって、結社の自由の推進、社会対話と団体交渉といった基準関連分野の技術協力プログラム、そして児童労働、特に最悪の形態の児童労働の廃絶に向けた活動に新たな弾みがつきました。
★児童労働に焦点を当てて
児童労働は切迫した社会的、経済的な問題であると同時に人権上の問題です。世界全体で2億5千万人もの子ども達が十分な教育を受けられず、健康を損ない、基本的な自由を奪われて働いていると考えられます。最も多くのものを失うのは子ども達自身ですが、国家が失うものも少なくありません。児童労働の根絶は最終的な目標であるだけでなく、経済開発と人間開発を推進する過程で常にその実現が図られるべきものです。
1973年に採択されたILOの最低年齢条約(第138号)には児童労働の効果的な廃絶に向けた原則が含まれていますが、これを強化するものとして、1999年に新しく最悪の形態の児童労働条約(第182号)が採択されました。この条約は、緊急に処理を要する事項として、奴隷労働や強制労働、あらゆる不正な活動における児童の使用、そして児童の健康、安全、道徳を害するおそれのあるあらゆる労働といったすべての最悪の形態の児童労働を、撤廃する即時の措置を求めています。
世界が児童労働の悪習に目覚めるに従い、反児童労働運動はほとんど前例がないほどの規模と強さを備えた地球規模の運動に成長しました。この運動は、政治的な境界、言語、文化、精神的な伝統を越えて広がっています。政府、使用者、労働組合、NGO、宗教団体といった市民社会のすべての構成員が力を合わせ、搾取的な児童労働はなくさなくてはいけないと宣言しています。
児童労働撲滅国際計画(IPEC)は、現在、児童労働の廃絶に向けて千以上のプログラムを世界中で進めています。
★ジェンダーと労働
男女平等は、「すべての男女にディーセント・ワーク(働きがいのある人間的な仕事)を」というILOの課題の重要な要素です。ディーセント・ワーク課題の4つの戦略目標(権利、雇用、社会的保護、社会対話)を貫くものとして、男女平等と開発の2つがあげられます。
ジェンダーの観点をあらゆる政策・活動計画の本流に据えること、これが男女平等に対するILOのアプローチです。
女性は世界の労働市場を変化させ、ある場合には、より大きな機会と経済的自立を達成することに成功しました。にもかかわらず、雇用問題のあらゆる側面に依然男女不平等が浸透しています。大部分の国で無給労働者、非典型労働者、求職意欲を失ってしまった失意の労働者の大半を未だに女性が占めています。
ILOは女性と労働に関する総合的な政策を公約し、数々の対応をとっていますが、これには次のようなものがあります。
- 女性の仕事の量・質改善国際計画:この計画は、雇用創出、訓練、企業家精神の育成、労働市場参入の円滑化、機会平等を通じ、女性により多くの雇用が提供されることを、そして同一賃金、性別分業の解消、安全衛生、非正規雇用の労働条件の改善、社会保障、家族にやさしい職場、弱い立場にある労働者の保護を通じ、より良い雇用を推進しています。
- ジェンダー、貧困、雇用に関する能力育成計画:この計画の重点は、女性が質の高い雇用に参入できる機会の向上、女性の交渉力の強化、特にインフォーマル・セクターに対する社会保護の拡張に向けた革新的な方法の提供に置かれています。
★ディーセントな雇用と所得
ILOの任務の中核にあるのは、自由な選択による生産的な雇用です。生産的な雇用なしに、人間的な生活水準、社会開発・経済発展、個人の満足が達成できるというのは錯覚です。グローバル化は繁栄と同時に不平等ももたらし、国際社会の集団的な責任の限界が試されています。それでもILOは、世界全体における完全雇用の達成に向けて努力しています。
ILOの使命は、自由、均等、安全、人間的尊厳といった条件のもとで、世界中の人々がディーセント・ワークを探し出すのを手助けすることです。これはILOを構成する政府並びに労使団体と絶えず接触を保ち、新しく革新的な雇用政策、労働市場政策、訓練政策の形成を支援することによって進められています。
グローバル化の社会的費用に対する懸念は、マクロ経済政策の国際的な協調を図り、その悪影響を弱める必要性を高めます。ILOは人間的な雇用の創出方法に関し、構成組織である政府並びに労使団体のみならず、銀行業、投資、貿易、企業開発の専門家や企業管理職といった利害関係者にもリサーチ、分析、アドバイスを提供していますが、これには小企業、少額融資、効果的な訓練制度の推進といった事項も含まれています。
ILOの雇用目標には次のような事項が含まれています。
- 政府並びに労使団体が経済及び労働市場の発展を分析し、地球規模及び地域レベルで雇用促進のための効果的な政策及び計画を策定し、交渉できる能力の構築
- 小企業開発を通じた雇用増大
- 女性の雇用の拡大と質の向上に向けた支援
- インフォーマル・セクター活動の質を高める政策及び計画の効果的な実行
- 中央計画経済から市場経済へ移行しつつある諸国に対する、雇用、労働市場、人的資源の分野を中心とした政策助言
- 若年労働者、障害者、外国人労働者、先住民といった人々がディーセントな雇用を見つけられるようなターゲット層を定めた計画の採用または強化
小企業を再構築し、そこで雇用を生み出すことが、ILOの雇用創出活動の中心となっています。
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